トレンドレポート
2026.09.09
冷凍食品はなぜ売れるのか?──
“時短”だけではない新しい価値の正体
冷凍食品から読み解く消費の変化と小売の役割・第1回


冷凍食品は「時間がないときに手間をかけずに使える」という枠を超え、「日々の食卓を支える存在」へと変わりつつあります。市場拡大の背景や生活者の変化について、冷凍食品ジャーナリストの山本純子氏に伺いました。
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冷凍食品ジャーナリスト
山本純子氏
冷凍食品ジャーナリスト
山本純子氏
冷凍食品専門紙の記者・編集長・主幹として34年。
2015年に独立し、冷凍食品専門情報サイト「冷凍食品エフエフプレス」を立ち上げ。
冷凍食品のプロとしてメディア出演も多数。
冷凍食品市場が拡大した背景
白鳥 冷凍食品市場はいまや1兆3000億円を超える巨大市場になっています。
社会構造の変化のほか、技術革新や利用者層の拡大も要因と考えられますが、それだけでは説明できなさそうですね。
山本氏 象徴的な出来事は、2015年の「チャーハン戦争」でしょう。それまでは「家族のお弁当のおかず」を選ぶ売り場という印象が強かったのですが、自分の昼食や夕食としてチャーハンや麺類を買う男性が増えたことで、市場は大きく拡がりました。その後、コンビニ各社も冷凍食品売り場を拡充し、誰もが日常的に利用するカテゴリーに変わっていきました。
加えて、調理加工技術の進歩によって、レンジで温めて手軽においしく食べられる商品が次々と誕生しました。「冷凍食品はおいしい」という体験をした人が増えたことが何より大きかったと思います。
冷凍食品は「保存食」ではなく、日常の食事を支える食品へと進化しています。現在はメーカーだけでなく、外食チェーンや専門店、中小企業まで参入し、実際には1兆3000億円どころではない大きな市場になっています。これからもさらに技術革新をしながら、生活者に届けていくことがますます重要になります。
2015年の「チャーハン戦争」とは
ニチレイフーズ「本格炒め炒飯🄬」の刷新、味の素冷凍食品「ザ★チャーハン」の登場で、おいしさの競い合いに。特に「ザ★チャーハン」は男性をターゲットにしたPRを展開して、冷凍食品売り場に足を運ぶ男性を増やしたと言われている。
冷凍食品の価値の変化
白鳥 冷凍食品は、「時短」が最大の魅力というイメージがあります。また、その利用者は男性やシニアにも広がっているようですね。
山本氏 「時短」の意味合いも変わってきました。私は以前から「手抜き」ではなく「手間抜き」という言葉を使っています。調理工程の一部を冷凍食品に任せれば、その分の時間を家族の時間、自分の時間に使えるようになります。冷凍食品はラクをするためだけのものではなく、暮らしを豊かにするための選択肢になったと言えます。消費者の冷凍食品の見方そのものが変わってきています。また、以前は「手づくりよりも価格が高い」という比較をされることが多かったのですが、ここ数年は「惣菜や外食よりも安い」と比較対象が変わりました。それらと比較して、価格や手間の面で「合理的」だと、消費者は評価するようになってきています。
シニア世帯では二人分だけを無駄なくつくりたいというニーズもありますし、今は男性も料理をして当たり前の時代。冷凍食品は忙しい人だけのものではありません。ライフスタイルが多様化するなかで、それぞれの暮らしを支える食品へと変わり、商品のラインナップも拡充されています。
山本純子さんが注目する冷凍食品5選
マニュアルいらずで失敗知らずの冷凍麺
「お水がいらない」シリーズ(キンレイ)
調理方法すら読まない人も増えているそうです。鍋ひとつ、火にかけるだけでつくれる簡便さが人気です。
食べるシーンを伝えるネーミング
おはようポテト(ハインツ)
古い例なのですが、1992年にネーミングを変更したところ売上がアップし、ロングセラーになりました。
食習慣まで変えてしまう人気商品の大容量版
ギョーザ標準30個入り(味の素冷凍食品)
餃子をひとり5個しか食べなかった家庭が、7、8個食べるようになるケースも報告されているそうです。
むね肉のから揚げ!
むねから🄬(ニチレイフーズ)
特製の塩麹・みりん・にんにくだれで漬け込み、しっとりやわらかな食感。衣は、米粉でカラッと仕上げています。
「旨辛」「大盛」流行りのコンボで人気
冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り(日清食品冷凍)
冷凍麺ジャンルで常に上位の商品。辛さが調節できる大盛麺は若い世代の男性からも支持を集めています。
第2回ではイオンマーケティングのデータから、冷凍食品における伸長カテゴリーを分析し、新たな食卓像と小売に求められる役割について考察します。
※本記事は、イオングループ内マーケティングレポート「イオンのアンテナ」をもとに抜粋・再構成したものです。
聞き手プロフィール
明治大学MBA専任教授 白鳥和生氏
1990年日本経済新聞社入社。速報部や消費産業部などを経て、2014年より調査部に所属。小売や外食、食品メーカー、流通政策を長年取材。日本経済新聞や日経MJのデスクも歴任。小売や食に関する著書も多数。