トレンドレポート
2026.07.10
一過性か持続的か──SNS時代における食トレンドの見極め方
データ×変化の兆しで読む食の市場・第1回


多様なデータやSNS上の意見があふれ、「一過性の話題」と「持続的な潮流」の見極めが難しくなっています。さらに、物価高や円安、単身世帯の増加などの環境も大きく変化しています。こうした状況下でどのように食トレンドを見極めるべきか、食文化研究家・渥美まいこ氏に伺いました。
「Yellowpage」代表/食文化研究家
渥美まいこ氏
「Yellowpage」代表/食文化研究家
渥美まいこ氏
クックパッドで法人マーケティングに従事し、生活者分析、トレンド、MD提案を年間260本行う。その後食品業界メディア「FoodClip」を立ち上げ、業務のかたわら趣味ではじめた執筆が話題となり累計フォロワー数は3万人超え。2023年夏に独立、「Yellowpage」創業。
データと熱量の両面から生活者の欲求を捉える
社会全体で共有される大きな流行が減り、トレンドをつかむことが難しくなっています。
渥美氏 全世帯に伝える媒体が縮小する一方でSNSの多頭化と、話題をつくりだすアルゴリズムによって、社会全体の盛り上がりのように見えつつ、界隈の一時的な話題に過ぎないものもあふれています。そのため、一時的な話題か、それとも消費者の欲望や価値観の変化に根差したものかを見極める“審美眼”が求められます。
その際に重要となるひとつが“熱量”だと思います。すべての人に共有されるような流行がなくなりつつある今、「誰かに深く刺さっていること」「誰かが強く好きであること」がトレンドの起点になります。もうひとつ大切なのは、「物価高」「単身世帯の増加」など、社会の空気感とトレンドを重ね合わせること。それによって、裏にある生活者の変化が見えてきます。
トレンド「お月見」にみる社会的背景
渥美氏 例えば、2020年ごろからのトレンドである「お月見」。「月を見ること」はコロナ禍でソーシャルディスタンスが求められた時期でも楽しめる格好のイベントでした。そして、ひとりでも気軽に参加しやすく、「秋っぽいことをした」という満足感もあります。現在の消費トレンドはいわゆる「ハレ」ではなく、「少し気分を変えたい」「軽く非日常を味わいたい」という方向に向かっているように思いますね 。
渥美さんは「お月見」を新生活様式にも合うイベントとして提案。雪見だいふくを月見団子に見立てたり、月見バーガーを楽しんだりと、日常の中で気軽に楽しめるイベントとして捉え直した。
https://note.com/atsumimaiko/n/n9b0d66669743
いま注目の食トレンドの導き出し方
イオンマーケティングのトレンドデータを活用して、食のトレンドを導き出していただきました。
どのように分析したのでしょうか?
渥美氏 まず、新聞の一面に掲載されるような社会経済状況など、背景となる確実な情報を幅広くインプットすることが重要です。これらは揺るがない事実として思考のベースになります。続いて、食のトレンドワードを眺めながら、それらを点として結び付けていくイメージです。先ほどお話した“熱量”や自身の共感など定性的なことを掛け合わせて、一過性なのかトレンドなのかを判断していきます。場合によっては、経験則に基づき、過去の流行のパターンと照らし合わせて判断することもあります。
【まとめ】食トレンド分析のためのポイント
トレンドの背景をインプットしておくこと
長期化する夏や物価高、人口動態など揺るがない社会の事実を日々インプットしておくこと。データを見る際の土台となる。
“熱量”がそこにあるかを確認すること
SNS時代は一部の盛り上がりも社会全体の流行に思えてしまう。そこに熱量があるかどうかを確認するのはひとつの解決策。
自分(または身近な人)が共感できるかを検証すること
データだけで判断せず、自分がひとりの生活者として本当に「買いたい」「食べたい」「行きたい」と思えるかを考える。
過去の成功パターンから考えること
リバイバルしやすいジャンル、先行きが読みやすい波形など経験則も参考になる。
第1回では、SNS時代における食トレンドの捉え方を整理しました。第2回ではイオンマーケティングのトレンドデータをもとに導き出した、注目の食トレンドワードを解説します。
※本記事は、イオングループ内マーケティングレポート「イオンのアンテナ」をもとに抜粋・再構成したものです
聞き手プロフィール
明治大学MBA専任教授 白鳥和生氏
1990年日本経済新聞社入社。速報部や消費産業部などを経て、2014年より調査部に所属。小売や外食、食品メーカー、流通政策を長年取材。日本経済新聞や日経MJのデスクも歴任。小売や食に関する著書も多数。
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