トレンドレポート
2025.11.28
データと生活者の声、両輪でヒットの“兆し”を掴むためにできること
外食データから予測する「食」トレンド・第2回


食トレンドをいち早く捉えるには、データと生活者の声の両方が欠かせません。第1回では「外食から小売へ広がる食トレンドの構造」を紹介しました。
第2回となる今回は「定着=民主化」を見極める視点から、アサイーボウルや腸活などのトレンドワードをデータで検証。Rettyの外食口コミの分析事例も交え、生活者の声の捉え方とデータ活用のポイントを深掘りします。
Retty株式会社
広報担当 関矢 瑞季氏
データエンジニア 武岡 孝広氏
統合ソリューション部 部長 進藤 太一氏
Retty株式会社
広報担当 関矢 瑞季氏
データエンジニア 武岡 孝広氏
統合ソリューション部 部長 進藤 太一氏
(左・関矢氏)出版社でプロモーション部門、医療人材会社で広報部門の立ち上げを経験し、note株式会社のPR担当を経て、2022年6月にRetty株式会社に入社。2025年よりIRも兼務。
(中央・武岡氏)2013年にRettyに入社、エンジニアとしてWebアプリケーションのバックエンド開発やメディアSEOを担当。2023年よりRettyのデータ基盤エンジニアリングを担当している。
(右・進藤氏)2017年にRettyに入社、データプロダクト・広告プロダクトの事業立ち上げを担当。2021年より広告事業を統括している。
実名型グルメプラットフォーム「Retty」とは
Rettyではユーザーが実際の体験に基づいた飲食店のレビューや写真を投稿している。実名制により口コミの信頼性が高く、リアルな評価が得られるのが特長。月間ユーザー数は2,600万人を超えている(2022年5月時点)
トレンドを捉えるにはデータと生活者の声、両方が必要
一過性のブームを追いかけるだけではなく、生活に根づいたトレンドとしてヒット商品を作るには、その“民主化”つまり定着のタイミングを見極めることが重要です。その際、カギとなるのが定量データと定性情報の両輪です。
トレンドの兆しを捉えるには、数字による動向に加えて、SNSや生活者の声、口コミや街中の飲食店の様子など感情や環境の変化にも目を向けた柔軟な仮説づくりが不可欠です。トレンドの「民主化」を見極めるには、データと生活者の声の掛け合わせがカギを握っています。
特徴的で代替不能な魅力を持つものは一時的なブームを超えて定着しやすいと思います
「トレンド定着のタイミングを見極めるのは難しいですが、定着する食には『代えがきかない特徴』があります。例えばタピオカは独自の食感や映え要素で支持され、形を変えながら再ブームを繰り返しています」(武岡氏)
トレンドワード「アサイーボウル」「腸活」をデータで検証
「アサイーボウル」と「腸活」はどちらも近年注目された食・健康関連のトピックですが、データで見ると広がり方の違いがわかります。
「アサイーボウル」は2013〜2015年に第1次ブーム、2024年に第2次ブームを迎えています。第2次ブームではGoogle検索数が先行して上昇し、その後口コミも増加。SNSやメディアによる「話題化から実際の来店へ」という流れの違いが見て取れます。
「腸活」は徐々に検索数が増加し、2020年にコロナ禍での健康志向で急上昇。2023年にかけて外食口コミも増え、情報収集から実行動への移行がうかがえます。一時的なブームではなく、ライフスタイルとして定着しつつあると言えそうです。
“棚に並べる”から“文化を育てる”へ —— 小売と外食がつながる視点
Rettyでは、外食トレンドの発信源ともいえる飲食店の口コミを通じて、生活者の“リアルな志向”を日々蓄積しています。投稿内容には、単なる「おいしい」といった反応だけでなく、その背景にある生活文脈や価値観、共感のポイントが表れます。そうした“生活者発の視点”を、小売の商品開発や売場づくりに柔軟に取り入れても良いのではないでしょうか。
たとえば、飲食店と連携した地域限定商品の展開や、地元シェフとのコラボによる実演イベント、地元食材を使ったレシピ提案など、外食と小売の循環を生むような取り組みは、生活者の共感を得やすいだけでなく、店舗の個性を高める手段にもなり得ます。
トレンド感度の高いトップユーザーによる商品開発の例もあります
「Rettyでは特定のグルメ情報に詳しいユーザー約110名を『TOP USER』として認定しています。一般生活者に先駆けた“兆し”を示す存在とも言え、最近ではユーザー独自の商品開発に至った例も」(進藤氏)
外食で始まった流行が、小売の棚で定着するような循環が生まれることで、日本の食の世界がより豊かになっていくのではないでしょうか。
イオンマーケティングによるデータ検証例
「チュクミ」を外食口コミ×TV×SNS×購買データで読み解く
イオンマーケティングでは、Rettyの外食口コミデータに加え、テレビや購買データも活用して、トレンド分析を行っています。今回はその一例として、「チュクミ」に注目します。
チュクミは韓国語で「イイダコ」を意味し、イイダコと野菜を甘辛だれで炒めた料理を指します。韓国料理専門店での外食を中心に人気を集めており、「食べ応えのあるタコ」といった口コミや、「チュクミ食べたい」といったSNS投稿が多く見受けられます。
テレビでもチュクミを扱う店舗が多数紹介されており、2024年11月には『マツコ&有吉 かりそめ天国』でも取り上げられ、広く認知されるきっかけとなりました。
コンビニでは、セブン-イレブンが「タコキムチ」を販売しており、「野菜と炒めればチュクミ風にアレンジできる」とSNS上で。
一方、スーパーでは冷凍ミールキットでの販売が中心で、惣菜としての展開にはまだ余地があります。
SNS上の口コミでは「イイダコが少なくて残念」といった声も見受けられるため、惣菜として販売する際には、イイダコをたっぷり使用することがヒットへのカギとなるでしょう。
※本記事は、イオングループ内マーケティングレポート「イオンのアンテナ」をもとに抜粋・再構成したものです。
聞き手プロフィール
流通科学大学教授 白鳥和生氏
1990年日本経済新聞社入社。速報部や消費産業部などを経て、2014年より調査部に所属。小売や外食、食品メーカー、流通政策を長年取材。日本経済新聞や日経MJのデスクも歴任。小売や食に関する著書も多数。