流行の起源は「外食」にあり！Retty口コミデータからわかる４つのトレンド

外食データから予測する「食」トレンド・第１回

食のトレンドは、いまや生活者主導でSNSやメディアを通じて急速に拡散・定着する時代です。
そこで今回は、実名型グルメプラットフォームRettyに取材。流通科学大学教授の白鳥和生氏と共に、生活者の価値観の変化や最新トレンドを読み解き、小売業の競争力強化に役立つヒントを探ります。

<INDEX>

外食から始まり、小売で定着する。小売に求められる「兆し」の感度
生活者の志向が浮かぶ４つの要素　Rettyが捉える“共感型トレンド”
合理性と感性を両立するZ世代の食トレンド

Retty株式会社　
広報担当　関矢瑞季氏
データエンジニア　武岡孝広氏
統合ソリューション部部長　進藤太一氏

（左・関矢氏）出版社でプロモーション部門、医療人材会社で広報部門の立ち上げを経験し、note株式会社のPR担当を経て、2022年6月にRetty株式会社に入社。2025年よりIRも兼務。
（中央・武岡氏）2013年にRettyに入社、エンジニアとしてWebアプリケーションのバックエンド開発やメディアSEOを担当。2023年よりRettyのデータ基盤エンジニアリングを担当している。
（右・進藤氏）2017年にRettyに入社、データプロダクト・広告プロダクトの事業立ち上げを担当。2021年より広告事業を統括している。

実名型グルメプラットフォーム「Retty」とは

Rettyではユーザーが実際の体験に基づいた飲食店のレビューや写真を投稿している。実名制により口コミの信頼性が高く、リアルな評価が得られるのが特長。月間ユーザー数は2,600万人を超えている（2022年5月時点）

外食から始まり、小売で定着する。小売に求められる「兆し」の感度

食のトレンドは、多くの場合「外食」から生まれます。特に情報感度の高い生活者が集まる飲食店では、新しい食材や調理法を取り入れた先進的なメニューがいち早く登場します。それがSNSなどを通じて広まり、テレビやネットメディアで紹介されることで一気に注目されるという流れが一般的です。その後、コンビニやスーパーといった小売の売場に商品が並び、誰もが手に取れる状態になった段階で、いわゆる“民主化”が進み、トレンドは定着へと向かいます。

こうした流れを把握し、早い段階で「兆し」をつかむことができれば、小売業は受け手ではなく“仕掛け手”として、先回りした商品開発や売場提案が可能になります。特にZ世代をはじめ、共感や体験価値に敏感な層が注目する「界隈」に目を向け、小さなブームの段階で種を拾えるかどうかがカギとなります。

トレンドが展開される流れ

その兆しを可視化するのに役立つのが、実名型グルメプラットフォーム「Retty」の口コミデータです。キーワードの出現回数に加えて、飲食店での体験が誰にどのような言葉で語られているかを分析すると、数字では見えにくい“感情”や“背景”を含んだ生活者の志向が浮かび上がります。

外食から始まるトレンドが多いですが、小売発のヒットもあります

桃屋の『食べるラー油』など、メーカーや小売業が仕掛け手となったトレンドも存在します。SNSの影響力が大きいですが、Z世代や特定の“界隈”の流行が広がるには、テレビの影響力が大きいですね」（関矢氏）

生活者の志向が浮かぶ４つの要素　Rettyが捉える“共感型トレンド”

食に対する価値観は、単なる空腹の充足ではなく、“自分らしさ”や“最適化”を重視したものへと変わりつつあります。Rettyが捉えている近年の食トレンドからは、「ヘルシー」「タイパ（タイムパフォーマンス）」「カスタマイズ」「映え」といった４つの要素が浮かび上がってきたと言います。

たとえば「グリークヨーグルト」は、“体にやさしい”というヘルシー志向の象徴。「台湾おにぎり」やコンビニで多種発売されている具だくさんおにぎりは、手軽で時間効率が良く、“タイパ食”として支持を得ています。「麻辣湯」や「タコス」は、自分好みに具材や味を調整できるカスタマイズ性が高く、食そのものを“体験”として楽しむ傾向が顕著です。「アサイーボウル」や韓国スイーツは見た目がSNS映えすること、“秒で伝わる魅力”がヒット要因となっています。こうした人気の食トレンドには、複数の要素を兼ね備えていることが多いのも特徴的です。

●アサイーボウル

ブラジル原産のスーパーフード・アサイーを使ったヘルシーなスイーツで、フルーツやグラノーラをトッピングした見た目の鮮やかさが特徴。栄養価が高く、美容や健康志向にもフィット。2010年代にハワイ発のトレンドとして広まり、2024年には韓国経由のブームとして再ブレイクした。

●麻辣湯（マーラータン）

中国発のスープで、好みの具材を選んでカスタマイズできる点が特徴。辛さとしびれのある味わいがクセになり、ヘルシーさと満足感を両立できる点から、特に若年層や女性を中心に人気が広がっている。

●タコス

メキシコ発のストリートフードで、具材や味の自由度が高い。Netflixの「タコスのすべて」の影響もあり本場の魅力が再注目され、カルチャーやストーリー性に惹かれる層からも人気。

合理性と感性を両立するZ世代の食トレンド

特にZ世代の消費行動には、「カロリーや時間を最適化したい」という合理性と、「SNS映え」を意識した感性の両立が見られます。また、普段は健康志向でヘルシーな食を意識する一方、特別な日はあえて“ギルティー（罪悪感がある）”な食体験を楽しむ「メリハリ消費」も定着しつつあります。

近年は、韓国・台湾を中心としたアジア圏からの影響も強まっており、海外発の食が日本でヒットするケースが増えています。また、日本で一度流行した食材やスタイルが韓国や台湾で再評価され、アップデートされた形で“逆輸入”される現象も起きています。

SNSの普及により、海外のコンテンツに触れる機会が増えたことで、「海外で流行しているものは間違いない」という心理が働き、トレンドとして広がりやすくなっているようです。

また、無駄な消費を避けたいという今の人たちの価値観も影響しており、実績のあるものが選ばれやすい傾向にあります。平成に一度流行したものが再び注目されるリバイバルブームもその一例です。過去のヒット商品や定番商品が、少し形を変えて再び人気を集める動きには、今後も注目しておくと良さそうです。

では、食のトレンドを捉えるにはどうしたら良いのか？第２回では Rettyの分析事例も交え、生活者の声の捉え方とデータ活用のポイントを深掘りします。

※本記事は、イオングループ内マーケティングレポート「イオンのアンテナ」をもとに抜粋・再構成したものです。