トレンドレポート
2025.11.28
なぜ人は推しにお金と時間を使うのか? 3.5兆円市場に学ぶファン化の法則
「推し活」を制する者はビジネスを制する・第1回


「推し活」の市場規模は、3兆円を超えると言われています。アイドルやアニメファンの行動に限定するのは、もう過去の話。今や生活の中に浸透し、小売の世界にも推し活トレンドが広がっています。若年層取り込みのカギにもなる「推し活」ビジネスについて、推し活ビジネスアドバイザーの瀬町奈々美氏にお話を聞きました。
推し活ビジネスアドバイザー
瀬町奈々美氏
推し活ビジネスアドバイザー
瀬町奈々美氏
立教大学経営学部在学中から、吉本興業とのコラボイベント、WEリーグ(日本女子サッカー)決勝大会の場外イベントなど、「推し」にかかわる多くの活動を成功に導く。
著書に『推し活経済 新しいマーケティングのかたち』(リチェンジ)。


推し活とは、ファンを超えた活動
「推し活」という言葉は知っていても、一部のアイドルやアニメファンの話だと思う方は多いのではないでしょうか。しかし今や、推し活マインドはすべての世代に拡がり、その経済規模は無視できない大きさ。「推し活を制する者はビジネスを制する」とも言えるのです。
では「推し活」とは何でしょう? つつましい暮らしでも、推しイベントには1万円を出す。類似品の中から推しメーカーの商品を選ぶ。こうした行為が推し活とされるのは、対象が人生に欠かせないものになった時です。推し活とは「好きだから買う・注目する」を越えて、対象をより積極的に応援する行為。そこにはまた、対象とともに自分も成長したいという強い思いがあります。
推し活に時間をかけるために在宅勤務ができる仕事に転職したり、「推し」アイドルのために自費で宣伝の広告トラックを走らせたりすることもあります。転職も広告トラックも、誰かに言われたからではなく、自発的な応援行動です。この自発的行動とそれに伴う熱意の増大が、推し活の特徴です。
たとえばここに「イオン推し」の人がいて、ショッピング体験をSNSで発信しているとしましょう。友人にも口コミを流す。最初はささやかな応援でしたが、自発的に応援するほど熱狂度が高まり、もっと応援したくなってきます。次はイベント情報を発信しよう。トップバリュの個人的ベスト10はこれ!と、強力なビジネスサポーターが誕生するのです。
推し活をする人は、損得では動きません。行動基準は、対象のためになるかどうか。そして、自分がポジティブな気持ちになれるかどうかです。損得抜きで応援し、自発的に支援してくれるファンを持つ。ビジネスにとって、これほどありがたい存在はないはずです。
「酒蔵推し」に「ブランド推し」推し活は様々な世代や分野に拡大中
推し活は、世代や対象を超えて拡大中。例えば「酒蔵推し」は、推し活には縁がなさそうなイメージの40~50代が中心です。推しの酒蔵を訪ね、推し仲間で飲み比べのイベントを開くことも。
特定ブランドのファンがSNSなどで情報を発信する「ブランド推し」も盛んです。
市場規模は3兆円超に拡大し、日本国民の3人に1人が推しを持つ
アイドルグループ・嵐が活動休止を発表してからの2年間で生んだ経済効果は、約3,300億円と言われます。これは、スカイツリー5本分の建設費用に相当する金額です。
推し活総研が15~69歳の日本在住男女に大規模調査(2025年1月)を行ったところ、推し活の市場規模を年間約3.5兆円、 推し活経済の全世代における1人当たりの年間推し活消費額の平均は約25万円という結果が出ています。
●「推し」がいる人の割合
HAKUHODO&SIGNING「OSHINOMICS Report」(2024.02)の調査では、日本国民の3人に一人が推しを持つという結果に。10代女性では約8割、20代女性では約6割にも及びます。

※サンプル数:50,000s(各性年代均等に回収)
※集計設問項目:「推し」がいる、「推し」がいると思う
この調査によれば、「推し」の対象は一つとは限らず、複数の推しを持つことで、推し活への熱量がさらに高まっているとの見方もあります。また、アニメ人気など、海外からの推し活も増えている印象です。こうした要因が重なり、推し活の経済規模は今後も拡大することが予想されます。
推し活は、不安定な時代の中で健やかに生き抜くための知恵、自己投資として捉えられていると考えています。情報が非常に多い時代なので、商品選択の際には「推し」に関わるものを買うという側面もあるでしょう。
では、推し活をビジネスに活用するためには何が必要なのか?第2回では、推される存在になることで生まれる支援の仕組みや、推し活ビジネスに不可欠な3つの要素をひも解きます。
※本記事は、イオングループ内マーケティングレポート「イオンのアンテナ」をもとに抜粋・再構成したものです。